ナコンサヨクのくだものがり(3)

 

 私が、吹き出てくる汗をぬぐっていると、クン・ポーが「chotimaはここに一度も来たことがないんだよ。」と言った。そうか、そうだったのか。昨日、「あなたは明日、果物に行くんですか」と聞いた彼女、どうも顔色がおかしいと思った。まゆげが少し八の字になったのはそのせいだったのか。彼女はここがどんな場所かよく知っていたのだ。彼女は今も、涼しいエアのきいた部屋で、テスト勉強でもしているのだろうか。かたわらに、ポケットベルをと携帯電話を置いて。私は妙に納得して、むきになってまたマッパンの実を拾うことに集中した。そうかそうか。先生はマッパンを拾うぞ。アリがなんだアリが・・・そう思いながら腰を折った。きんちゃく袋の口のようになっているジーンズを突っ込んだ足首の上に、茶色い大きなアリがまとわりついているのを見つけては、足を大きく振った。
 休み時間は、サーラーの下で昼ごはんを食べた。おかずはケン・カイ(タイのカレー)と、ガイヤーン(やきとり)だった。私はあまり食べなかった。働かざるもの食うべからずというか、タイ人にくらべて、私のとったマッパンの数といえば数えられるほどのものだったことが、なんだか情けなかったのだ。アリが体中に入ってきて生きた心地がせず、痛みのせいで食欲が落ちていた。それよりなにより、彼らの強さにあこがれた。
  彼らはひょいとアリをつまんでは捨て、つまんでは捨て、痛みをこらえてビニール袋の中にオレンジ色の実をあふれんばかりにつめて木から降りてくるのであった。私はラクロスの時使う網付きの長い棒のような収穫のための道具を使いこなすことさえできなかった。重さにふらふらしてしまうのである。長い棒を私の身長では支えられないのだった。まるで猿のように地面に落ちた実を拾う自分が、あまりに情けなかった。
 クン・ポーが携帯電話を腰から抜いて、電話をしている。会話を聞いても誰かよくわからない。もくもくとごはんを口に運んでいると、クン・ポーは私に電話を差し出した。あわててごはんを飲み込みながら、受話器を持つと、chotimaの声がした。クン・ポーが家に置いてきた娘を心配して電話をしたのだった。私は「ミーモットユオッユオッ」というと、彼女は笑っていた。私はエアのきいた部屋にいる彼女がうらめしかった。バナナの大きな葉っぱのおいしげる、アリがたくさんいて、蜂の巣もある農園を彼女は見たことがないのだ。私は「君とくだものがりに行きたかった」と言った。すると、「今日はいやだ」と彼女は答えた。受話器の向こうで、ポリポリとスナック菓子を食べる音が聞こえていた。

Mot1_5.gif (16163 バイト)

戻る